精神科の暴力が怖かった私がCVPPP研修で学んだこと


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精神科への転職を考えたとき、真っ先に頭に浮かんだのは「暴力」という言葉でした。

怖い。その一言に尽きました。精神科で働く前から、暴力の現場に遭遇したことがありました。自分が被害を受けたこともありました。だから怖かった。それでも精神科に転職し、今こうして働いています。

この記事では、私がCVPPP(包括的暴力防止プログラム)の研修を受けて、暴力への見方がどう変わったかを書きます。精神科への転職を不安に思っている方に、少しでも参考になれば嬉しいです。


暴力被害を受けた話【それでも精神科で働いている】

転職前から、暴力の現場を何度か経験していました。自分が直接被害を受けたこともあります。

ある患者さんのことが、今も記憶に残っています。感覚過敏のある方で、特定の刺激がトリガーとなり、突発的に激しい行動に出ることがありました。その場にいたスタッフ全員で対応しましたが、混乱の中でこちらにも衝撃が及びました。眼鏡を吹き飛ばされ、壊されました。

怖かったです。正直に言います。

その体験以来、暴力というものを「脅威」として捉えるようになりました。患者さんは悪意を持ってこちらを攻撃しているのだ、と。身構えるようになりました。

でも今は、その見方が変わっています。


CVPPPとは何か【1分でわかる】

CVPPP(シーブイトリプルピー)と読みます。Comprehensive Violence Prevention and Protection Programmeの略で、日本語では「包括的暴力防止プログラム」といいます。

難しそうな名前ですが、一言で言えば「自分も患者さんも傷つけないための理論と技術」です。

精神科では、患者さんから暴力を受ける場面があります。それは現実です。でもCVPPPは、その暴力をただ力で抑え込もうとするものではありません。なぜ暴力が起きるのかを理解し、起きる前に防ぐ。どうしても介入が必要な場面では、お互いが傷つかない方法で対応する。そういう考え方です。

私は研修を受けるまで、この言葉すら知りませんでした。今思えば、恥ずかしいです。


研修で「ゾッとした」瞬間

研修の中に、「絶対的な禁止事項」というスライドがありました。

頭・腹部・胸への圧迫。苦痛を伴う力の使用。当事者の尊厳を貶める言動。窒息が予防できないような方法——。

これらはすべて、してはいけないことのリストです。

見た瞬間、ゾッとしました。

自分がそれをやったという記憶はありません。でも、「正しい知識がないまま、あの修羅場の中で対応していた」という事実が、急に重く感じられました。もしかしたら、知らないうちにやってしまっていたかもしれない。そう思うと、背筋が冷たくなりました。

知識がないまま現場に立っていることの怖さを、そのとき初めてリアルに感じました。


手から伝わるメッセージ【演習体験】

研修には実技演習がありました。その中で、最も印象に残ったのが「手から伝わるメッセージ」を体感する演習です。

2人1組になり、一方が相手の手首を握ります。Aは力を込めて握る。Bは優しく包み込むように握る。受け手はその違いを体で感じます。

力強く握られると、怒り・緊張・威圧感が伝わってきます。優しく包まれると、安心感が伝わってきます。

さらに印象的だったのは、「患者さんが力を抜いたとき、自分はどうするか」という問いでした。

そのまま力を入れたままにする。それは間違いです。患者さんが力を抜いたとき、自分も力を抜く。それによって「安心してほしい」というメッセージが、言葉なしに伝わるのです。

自分の体の緊張や興奮が、触れている手を通じて患者さんにそのまま伝わっている。その事実を、体で理解した瞬間でした。


研修後に変わったこと

「なぜそうなるのか」を考えるようになった

研修前の私は、暴力を「脅威」として捉えていました。患者さんが悪意を持って攻撃してくると思っていました。

でも研修で学んだのは、暴力を振るう患者さんは「自分が攻撃されているから反撃している」と感じていることが多い、という視点でした。悪意があるのではなく、自分を守ろうとしている。その視点が、研修で初めて腑に落ちました。

暴力として手が出てしまう背景には、何かがあります。幻聴に追い詰められていたのかもしれない。外部の刺激が強すぎて対処しきれなかったのかもしれない。不安と混乱の中で、それしか方法がなかったのかもしれない。

こちらの関わり方次第で、暴力にまで発展しなかった可能性がある。そう思えるようになりました。

前兆を察した日のこと

研修後、実際の臨床でこんな場面がありました。

ある患者さんを洗面に連れて行ったときのことです。ドアから出てきた瞬間、いつもと違うと感じました。目がぎらぎらしており、表情が険しかった。

研修前の私なら、何も考えず横に立って見守っていたと思います。でもその日は違いました。患者さんの後方、視線が気にならない距離。そして、もし何かあっても素早く動ける位置。自然に、そこにポジションを取っていました。

次の瞬間、患者さんは歯磨き用のコップを振り回し、こちらに水を振りまいてきました。突発的な行為でした。

完全には避けきれませんでした。看護服にいくらかの水がかかりました。

その瞬間、仲間がすぐに動いてくれました。私が標的になっていると察知したスタッフが、私を患者さんの目に入らない場所へ誘導してくれたのです。そして興奮している患者さんに、躊躇することなく対応してくれました。

緊迫した場を離れて、ほっとしました。それと同時に、仲間のありがたさを、これほど強く感じたことはありませんでした。

一人ではなかった。その実感が、今も胸にあります。

自分の関わりを振り返るようになった

介護経験もあり、コミュニケーションには自信があったつもりでした。でも研修を受けて、「自分の言葉が無意識のうちに患者さんを追い詰めていないか」と振り返るようになりました。

「困っているのは患者さんだ」という視点が、自分の中に少しずつ根付いてきています。


CVPPPという理論と、仲間たちが守ってくれる

精神科への転職を考えているあなたへ。

「精神科」と聞いて、暴力・衝動性・怖い、というイメージが浮かぶと思います。去年までの私もそうでした。CVPPPという言葉も、知らなかったと思います。

でも、この理論を知っただけで、見方が変わります。

暴力をただ怖いものとして捉えるのではなく、そのメカニズムを理解し、起きる前に防ごうとする。自分を守りながら、患者さんも守る。そういう考え方が、精神科の現場には存在します。

そしてもう一つ、大切なことがあります。

一人ではないということです。暴力のリスクがある場面では、複数のスタッフで対応します。CVPPPの考え方を共有した仲間が、そこにいます。

怖さの正体を知ったとき、それは乗り越えられるものに変わります。やみくもに恐れていた暴力に対して、対応できる理論と仲間が、私の職場にはあります。


CVPPPの研修があるかどうか、夜勤の体制はどうか——こうした情報は、求人票には載っていません。精神科への転職を考えているなら、転職前に確認しておきたい項目です。

精神科への転職を具体的に考え始めたとき、一番困るのは「実際のところどうなのか」という情報が表に出てこないことだと思います。求人票には書いていないことの方が、本当は大事だと思います。実際のところは、現場で働いてみないとわかりませんが、転職エージェントを使うと、こうした内部情報を面接前に確認してもらえます。転職に結びつかなかったとして、話を聞くだけでも、自分の状況や選択肢が整理されるというメリットがあると思います。

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まとめ

  • CVPPPとは「自分も患者さんも傷つけないための理論と技術」
  • 知識がないまま現場に立っていることの方が、本当は怖い
  • 手から伝わるメッセージ——触れ方一つで安心を届けられる
  • 暴力の「前兆を察する」方向へ観察の重心が変わった
  • CVPPPという理論と仲間たちが、あなたを守ってくれる

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