精神科の人間関係、正直どうか【急性期から転職した現役ナースが答える】
結論を先に言います。
私は精神科の方が、人間関係は楽です。
ただ「楽」の中身は、転職前に想像していたものとは少し違いました。急性期から精神科に転職して数年。両方の現場を経験した立場から、正直に答えます。
急性期の人間関係、正直なところ
急性期病棟は、常にモニター音が鳴り、静かな緊張感に包まれていました。
スタッフ同士の会話はもちろんありました。面倒見の良い上司や先輩もいて、チームワークも成立していました。お互いに助け合う場面もたくさんありました。
ただ、思っていることをズバッと言う人が多かった印象があります。気の強い人が集まりやすい環境なのかもしれません。一部には、仕事でうまくいかないスタッフを婉曲に責め続けるような場面もありました。表立ったいじめではないけれど、じわじわと追い詰めるような雰囲気が、ごく一部に存在していました。
何より「ミスは許されない」という空気は、職場全体に漂っていました。それは患者さんの命を預かる場所として当然のことでもあります。ただその緊張感が、人間関係にもそのまま出ていたように思います。
ほんわか和気藹々、という感じではありませんでした。
精神科に来て最初に感じたこと
転職して初めて日勤に入った朝、ナースステーションでスタッフが笑い合っているのを見て、少し戸惑いました。
「こんな感じでいいのか」と。
急性期では、勤務中に笑い声が上がることはほとんどありませんでした。精神科では、スタッフ同士が冗談を言い合いながら仕事をしている。その光景が、最初は少し不思議に映りました。
雰囲気の違いはほかにもありました。急性期ではズバッと思ったことを言う人が多かったのに対し、精神科では思っていることはあっても、ストレートには言わず、空気を読み合う感じがありました。患者さんへの関わり方が、スタッフ間の文化にも自然と出ているのかもしれません。
精神科の人間関係、良かったこと
「一緒に悩んでもらえる」文化
1年目のころ、発達障害をベースに統合失調症を発症した患者さんを受け持つことがありました。今思えば、経験の浅い自分には難しいケースでした。
その患者さんはほとんど話さず、何を考えているかわからない。幻聴や妄想に支配されているのか、食事も水分も全く摂ろうとしない。体調が心配でたまりませんでした。発達障害についての知識もほぼなく、どう関わればいいのか、正直手詰まりでした。
信頼できる先輩に相談しました。
一般科であれば「これはこうした方がいい、根拠はこれ」と答えが出ることが多い。でも精神科では、明快な答えが出ないことの方が多いのです。人間の精神を扱っているのだから、当然かもしれません。
先輩は正解を教えてくれたわけではありませんでした。ただ、じっくり話を聞いてくれました。うまくいかない自分の思い、ジレンマ、不安——それを受け止めてくれました。
「一人で抱え込まないで。一緒に考えよう。みんなで看護をしているんだから、みんなで共有しよう」
その言葉だけで、気持ちがずいぶん楽になりました。
正解を教えてもらうより、一緒に悩んでもらえた。それが精神科の人間関係の、一番の特徴だと思います。
一般科では報告・連絡がメインで、どちらかというと自分の裁量で仕事を進めることが多かった。精神科では「相談」の比率が明らかに高い。患者さんへの統一した対応が必要だから、情報共有とすり合わせが欠かせないのです。一人で抱え込まない文化が、自然と根付いています。
男性スタッフが多い、という意外な違い
これは転職前には予想していなかった変化でした。
一般科では、男性スタッフの数は圧倒的に少なかった。病棟で何人、ではなく病院全体で何人、と数えた方が早いくらいでした。数少ない男性スタッフは、不思議と同志のような感覚がありました(笑)。
精神科に来て、男性スタッフの数が増えました。私の病棟では、約30人のスタッフのうち6人が男性です。
これが思いのほか、働きやすさに影響しています。
うまく言語化するのが難しいのですが——女性が多い職場では、言葉の選び方・空気の読み方・輪の保ち方など、知らず知らずのうちに疲れることがありました。男性スタッフが一定数いる環境では、コミュニケーションが用件中心でサバサバしています。多少雑でも許される。意見が違っても人格の問題に発展しにくい。黙っていてもコミュニケーションが成立する。
脳の使い方が、少し違う感覚があります。
これはあくまで私個人の感覚であり、すべての職場・すべての人に当てはまるわけではありません。ただ、一般科と精神科の大きな違いの一つとして、男性スタッフの比率は意外と見落とされがちなポイントだと思います。
精神科の人間関係、難しい面
良いことばかりではありません。
精神科はスタッフ間の距離が近く、患者さんへの統一した対応のために密なコミュニケーションが求められます。それはメリットでもありますが、相性が濃く出る側面でもあります。
実際に、管理的な立場のスタッフからの厳しい言葉がきっかけで、精神的につらくなり休みが続いたケースを見たことがあります。どの職場にも、感情的になりやすい人はいます。その影響は、じわじわと周囲にも広がっていきます。
ただ、これは精神科に限った話ではありません。どの職場にも、どの業界にも起こりうることです。精神科だから特別に人間関係が難しい、ということではないと思っています。
急性期と精神科、どちらが楽か【私の結論】
どこに行っても、いろんなタイプの人がいます。きつい人も、話しやすい人も、どちらもいます。それはどの職場も同じです。
ただ、精神科には「話を聞く文化」が確実にあります。
患者さんの話を聞くことが仕事だから、傾聴する姿勢がスタッフ間にも自然と出ている。自分がしんどいとき、患者さんへの対応で悩んでいるとき、同僚に相談するとちゃんと聞いてもらえる。少し自分が患者さんになったような気分ですが(笑)、それがとても気楽なのです。
一般科は人の命をダイレクトに預かる場所だから、どうしても日頃から気が張り詰めます。精神科にも独自の緊張感はありますが、常にピリピリしているわけではない。その違いは、人間関係の空気にも確実に出ています。
転職前は「精神科の人間関係はどうだろう」と不安でした。入ってみなければわからない部分はもちろんあります。ただ、少なくとも話し上手な看護師が多いのは確かです。
悩みを一人で抱え込みやすい人ほど、精神科の「一緒に考えよう」という文化は、働きやすく感じるかもしれません。
関連記事
精神科転職に関する記事は、こちらのページに不安の種類別でまとめています。