看護師がすぐ来てくれないのはなぜ?【元介護士の看護師が答え合わせ】


利用者さんの様子がおかしいと思って看護師を呼んだのに、すぐには来てもらえない。それは、あなたの報告が軽く見られているからではありません。

介護福祉士として老健で働いていた頃の私は、そう思えませんでした。「私のお願いは、後回しにしてもいいものだと思われているんだろうか」と、何度もモヤモヤしたからです。その後、看護師になり、報告を受ける側に立って、ようやく答え合わせができました。

この記事では、介護職だった頃の私には見えていなかったものを、看護師になった私が答え合わせしていきます。いま同じモヤモヤを抱えている介護職の方に、届いたら嬉しいです。

見えていなかったこと①:呼んだのに、来てくれなかった

老健で働いていたある日の午前中のことです。おむつ交換のとき、ベッドで過ごす時間の長い利用者さんの仙骨部に、発赤を見つけました。褥瘡になりかけているかもしれない。そう思って、その場で看護師さんを呼びました。

返ってきたのは「今忙しくて行けない」という言葉でした。

その利用者さんは気の短い男性でした。「早く終わらせろ!」と怒鳴られました。当然だと思います。おむつ交換の途中で、身体を出したまま待たされているのですから。怒りたくもなります。

利用者さんへの申し訳なさと、「なんで来てくれないんだ」という気持ちに挟まれながら、しばらく待ちました。結局あきらめて、交換を終えました。改めて午後にお願いし直すと、今度は看護師さんが来てくれて、処置もしてもらえました。

来てくれたし、処置もしてくれた。それでも、あの午前中のモヤモヤは残りました。私のお願いは、軽く見られたんだろうか。介護職の報告は、その程度のものなんだろうか。そう思っていました。

答え合わせ①:あの「忙しい」の向こう側

看護師になった今なら、あのときの「忙しい」の向こう側が想像できます。

別の利用者さんの処置をしていたのかもしれない。医師に報告や相談をしていたのかもしれない。急変対応や、ご家族への対応が重なっていたのかもしれない。看護師の仕事は、点滴・処置・医師への報告・記録が同時進行になることがめずらしくありません。

考えてみれば、答えは出ていました。その看護師さんは、午後にはちゃんと来てくれたのです。処置もしてくれました。軽く見られていたわけではなく、あの瞬間、手が足りなかっただけでした。

でも、当時の私にそれを知る方法はありませんでした。この「知らない」ということが問題だったのだと、今では思います。

見えていなかったこと②:2時間戻ってこない看護師会議

もうひとつ、当時の私が理解できなかったものがあります。看護師会議です。

私のいた老健では、週に1回ほど、各フロアの看護師が集まる会議がありました。長いときは2時間、フロアから看護師がいなくなります。当時、介護リーダーをしていた私は、正直困っていました。相談したいことも、対応してもらいたいこともある。何かあれば会議室まで呼びに行かなければならないし、処置は後回しになる。

「利用者さん第一なのに、何をそんなに話し合うことがあるんだ」

そんな反発を、心のどこかで持っていました。

答え合わせ②:施設看護師の孤独

看護師になって、わかったことがあります。

病院は、看護師が多数派の職場です。毎日ミーティングがあり、困ったことがあれば、その場で先輩や同僚に相談できます。血管の細い高齢の患者さんの点滴が入らなければ、別の看護師が入れ替わりで試すこともできます。

施設はそうではありません。看護師の数が少なく、日常の中で医療的な判断を一人で求められることもあります。相談したくても、頼りになる看護師がすぐそばにいるとは限りません。もし私が当時の老健の看護師だったら、不安だったと思います。

あの2時間の会議は、おそらくその不安の受け皿でした。担当する利用者さんの健康問題を相談する。ときには介護職との衝突を吐き出す。看護師長に重要な案件を上げる。看護師同士が毎日ミーティングできない施設では、あれが唯一に近い、貴重な場だったのでしょう。

何をそんなに話し合うことがあるんだ、と思っていました。今なら分かります。話し合うことだらけだったのです。

溝の代償を払うのは、利用者さんだった

ここまで書いてきて、思うことがあります。

あの午前中、一番つらかったのは誰だったのか。板挟みになった私でも、忙しかった看護師さんでもありません。身体を出したまま待たされた、あの利用者さんです。

介護職の「来てくれない」という不安と、看護師の同時進行の業務との間には、見えない溝があります。その溝の代償を払うのは、職員ではなく利用者さんです。これは職員同士の気持ちの問題ではなく、利用者さんが安心して気持ちよく過ごせるかどうかの問題なのだと、両方の立場を経験して思うようになりました。

溝を埋めるのは、たった一言だった

では、どうすればよかったのか。答えは、とてもシンプルです。

あのとき、「ごめんなさい、いま急変対応をしているんです。これが終わったら行きます」と一言あれば、私は納得できていました。理由と、いつなら対応してくれるのか。それだけで、「軽く見られた」という誤解は生まれなかったはずです。

会議も同じです。「心不全が悪化している〇〇さんの対応を話し合ってくるから」「〇〇さんの医療処置について相談してくるから」。そんなふうに、具体的な中身を一度でも教えてもらえていたら、あの反発は持たずにすんだと思います。

看護師の忙しさも不安も、介護職からは見えません。見えるようにできるのは、看護師側の一言です。私自身、看護師として働く今、この気配りをさぼっていないか、ときどき自分に問い直しています。

かつての私と同じ気持ちの、介護職さんへ

もしあなたが、あの頃の私と同じモヤモヤを抱えているなら、まず伝えたいことがあります。あなたの苛立ちは、利用者さんを思うからこその、当然の感情です。

そのうえで、報告を受ける側になった私から、ひとつだけアドバイスがあります。

看護師に何かを伝えるとき、「してほしいこと」を先に、理由を後に言ってみてください。

「あの利用者さんを見てもらえますか? なんだかいつもより動きが悪くて、ぼんやりした感じなんです」

こんな形です。報告を受ける側は、「結局、何をしてほしいのか」が最初に分かると、優先順位をすぐに組めます。結果的に、来てもらいやすくなるのです。

根拠を医学の言葉で言えなくてもかまいません。「いつもと違う」という違和感は、利用者さんと一番長く関わっているあなたにしか出せない、立派な根拠です。むしろ、それを一番大事にしてほしいと思います。

もし余裕があれば、「おかしい」と思ったときにバイタルサイン(体温・血圧・脈拍・酸素飽和度)を測っておくと、看護師が判断する材料になります。迷ったらとりあえずバイタル、でいいと個人的には思っています。電子体温計や自動血圧計、パルスオキシメーターでの測定は、介護職が行ってよいとされています。施設のルールや使える機器の範囲で、できるときで大丈夫です。

ちなみに、報告に悩むのは介護職だけではありません。看護師も、医師への報告で同じように悩んでいます。私自身の失敗談はこちらの記事に書きました。

答え合わせを終えて

看護師がすぐ来てくれないのは、あなたの報告を軽く見ているからではありません。向こう側では、見えない業務と不安が同時に動いています。その溝を埋めるのは、大げさな仕組みではなく、お互いの小さな一言です。

これが、介護職と看護師の両方を経験した私の、答え合わせの結果です。

怒鳴られながら待っていたあの日の私に、教えてあげたいです。あなたの報告は、軽く見られてなんかいなかったよ、と。


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