看護師が燃え尽きる前に【あの頃の私へ、そして今しんどいあなたへ】
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燃え尽きそうになった、とは思っていませんでした。
急性期で働いていたあの頃、体重が5キロ落ちても、逆流性食道炎を指摘されても、「まあ、忙しいからしょうがない」と思っていました。自分がバーンアウトに近いところまで来ていたと気づいたのは、精神科に転職してからのことです。
この記事は、あの頃の自分へ向けて書いています。そして今、同じような場所にいるかもしれないあなたへ。
体が出していたサイン
健康診断で、初めて逆流性食道炎を指摘されました。それまでそのような指摘を受けたことは一度もありませんでした。カレーや脂っこいものを食べると胸がむかむかして、食事が憂鬱になっていきました。
血圧も上がっていました。これも健康診断で初めて言われたことでした。
一番つらかったのは、眠れないことでした。
夜勤明けで帰宅しても、体は疲れているのに頭が覚醒したままでした。急変対応のあった日、自分がミスをしてしまった日、患者さんが亡くなった夜勤明けは特にひどかった。目を閉じても、その場面が繰り返し浮かんできました。一度は睡眠薬を処方してもらおうかと思ったほどです。薬に頼ることへの怖さがあり、そうはしませんでした。今であれば、精神科で働いているので安全な薬があることも知っています。あの頃の自分なら、処方してもらっていたかもしれない。
眠れないから起きられない。貴重な休日が終わっていく。子どもの相手もできない、家のこともできない。何をやっているんだろうと思い、また自己嫌悪に陥る。その繰り返しでした。
心が出していたサイン
朝、ロッカーで着替えながらため息をついていました。
「どうせ今日も帰れないんだろうな」。
前残業が当たり前の職場でした。始業の1時間前には病棟に入り、情報収集と点滴の準備をする。それが日常でした。子どものために働いているのに、子どもが起きる前に家を出る日もありました。何のために働いているのか、わからなくなっていました。
でも病棟では、気分を上げなければなりません。暗い表情では患者さんを元気づけることができない。ロッカーでのため息と、病棟でのカラ元気。その落差がまた、ストレスになっていました。
ちょっとしたことでいらいらするようになっていました。普段なら受け流せることが気になる。同僚にも患者さんにも、笑顔で接することができない。そんな自分にまたいらいらする。いらいらの負の連鎖でした。仕事のミスも増え、同僚と衝突することもありました。
スーパーで人が倒れていた日のこと
今でも後悔していることがあります。
夜勤明けに買い物をしようとスーパーに寄ったときのことです。疲れながら売り場を歩いていると、向こうで人が倒れているのが見えました。心疾患か脳血管疾患だったかもしれません。ただの転倒だったかもしれない。でも看護師として、本来ならすぐに駆け寄り、安全を確認し、対処すべきでした。
そのとき私は、その場から立ち去りました。
「もう嫌だ。プライベートの時間まで看護師でいたくない」。体が反射的に逃げていました。
あの方がその後どうなったか、わかりません。もし私が駆け寄っていれば、結果が違っていたかもしれない。今思うと、深く後悔しています。でもあの頃の私には、それだけの余裕がありませんでした。
心から笑ったのはいつだろう、と思うようになっていました。思い出せませんでした。
それでも辞めなかった理由
辞めようと思ったことは、正直あります。
でも辞めませんでした。
一番大きかったのは、子どもの存在でした。まだ小さい子どもを育てるにはお金がいる。准看護師学校・正看護師学校と、4年間も学校に行かせてもらったのに、ここで辞めてしまっては妻に申し訳ない。奨学金も残っていました。貯蓄がなかったわけではありませんが、そのころの自分は「辞めてはいけない」と頑なに思っていました。
きれいごとではなく、それが本音でした。
精神科で気づいたこと
精神科に転職してから、適応障害やうつ病の患者さんを受け持つようになりました。
仕事のストレスで精神のバランスを崩した方が、多くいました。真面目で責任感が強く、何でも一人で抱え込んでしまうタイプの方が、特に多かった。
その方たちを見ていて、ふと思いました。
まるで、あの頃の自分を見ているようだ、と。
責任感が強いから休めない。真面目だから手を抜けない。誰かに頼ることが苦手。そのまま走り続けて、ある日限界を超えてしまう。あの頃の急性期の自分が、患者さんの姿に重なりました。
一歩間違えば、自分も同じだったかもしれない。
患者さんのご家族が、本当につらそうにされている場面を何度も見てきました。もし私が精神のバランスを崩していたら、妻や子どもを同じように悲しませていたかもしれない。
まず自分の心と体の健康があって、はじめて患者さんのケアができる。自分が健康でなければ、病める人を支えることはできない。そのことに、精神科に来てようやく気づきました。
今しんどいあなたへ
真面目で責任感が強い人ほど、燃え尽きやすいと思っています。看護師という職業を選んだ方には、そういう人が多い。
不眠、高血圧、食欲の変化、いらいら——自分の体や心が出しているサインに、気づいていますか。気づいていても、仕事を投げ出すことができない。そんな方が多いと思います。
「休んでください」とは言いません。私もそうできなかったから。
もし転職が頭をよぎっているなら、求人の相場を知っておくだけでも、選択肢が広がります。
ただ、これだけは伝えさせてください。
転職は、逃げではありません。自分の優先順位を並べ直す、正当な権利です。私は精神科に転職して、子どもとの時間を取り戻しました。完全な正解かどうかはわかりません。でも、後悔はしていません。
この記事を読んで、「自分だけじゃなかった」と思ってもらえたなら、それだけで十分です。
そして最後に一つ。
私たちは患者さんの権利を守ることには、とても敏感です。でも自分自身の権利を守ることは、後回しになっていないでしょうか。
自分を、虐待しないでください。
まとめ
- 燃え尽きのサインは、体に先に出る(不眠・血圧・消化器症状)
- 心のサインは見逃しやすい(いらいら・カラ元気・笑えない)
- 辞めなかった理由はきれいごとではなく、子ども・妻・奨学金だった
- 精神科の患者さんが「あの頃の自分の鏡」だった
- 転職は正当な権利。まず自分を守ることが、ケアの土台になる